一口に芸術家といってもさまざまなタイプが存在します。この多様性こそがアートというジャンルには必要であり、相互に刺激を与えあって有益なシナジーを生み出すのです。鑑賞する側としては、これを踏まえて楽しむことがポイントになります。どのような人が手掛けたのか考えると、作品の裏側にある要素まで見えやすくなるからです。
芸術家のタイプ
比較的多い芸術家のタイプとして感性を重視する人が挙げられます。物事を論理的に考えるのではなく、自分の心に芽生えた感情をそのまま表現するスタイルです。天才型と称されることもよくあり、常人には理解しづらい点もただ見受けられます。分かりやすい例としては、突如としてアートの分野で大成する芸能人が挙げられます。芸術とは無縁と思われていたお笑い芸人が、驚くような作品を仕上げる事例が多くありました。芸能界を引退したと思われてていても、アートの分野で活躍中のケースが見られます。しかも彼らの創作した作品には何百万という高値が付けられているのです。芸能界で活躍するには、常人とは異なるセンスが必要だったことでしょう。それを芸術の分野でも発揮したというわけです。
これはあくまでも例にすぎず、元からアートにのみ焦点を絞って活動している人もたくさんいます。幼い頃に見た絵が忘れられず、自分も画家を目指すようになるなど人によって動機は異なります。しかし根底にある想いは同じであり、自分で作品を生み出したいという情熱が湧き続けています。このような情熱家も芸術家によく見られるタイプの一つです。感情表現が豊かであり、それをぶつけるかのように作品を仕上げていきます。こちらは天才というより鬼才と呼ばれることが多く、ダイナミックな作品が多いという特徴もあります。ただし、その情熱がずっと継続するというわけではありません。気分がのらないときは、まったく何も作らなくなることが多いです。まさにモチベーションが命であり、それが高まったときは驚くようなパフォーマンスを発揮します。
上記の2つは共通点もありますが、それらとは対極のタイプもあります。論理的に考える芸術家であり、こちらからも名作が多く生み出されている状況です。人間の心はアナログ的で、受ける印象に公式はないと思われがちです。しかし、実際は人が受ける印象は視覚的な効果と密接な関係があります。単純な例ですがカラーには暖色と寒色があり、同じデザインでも配色次第で漂う雰囲気は大違いです。食べ物をデザインする際、暖色を用いると食欲が湧いてくる一方で、寒色を使うと落ち着いたテイストになります。赤を多用すると感情を激しく刺激し、緑をたくさん使うと落ち着きを与えやすいです。他にもいろいろな対比が存在しますが、いずれにせよ視覚的な事象はイメージと無関係ではありません。このようなセオリーを踏まえて、作品作りで行う計算に活かしていく人たちも多いです。こちらは秀才型と呼ばれており、天才型や情熱型と違う点がたくさん見受けられます。
スランプが少ないこともその一つで、作品のクオリティを一定に保つことが得意です。天才型などは常に自分の内にリソースを求めているのため、それが枯渇している状態では活動を続けられません。回復を待ってから新しい作品にチャレンジすることになります。発想力は素晴らしいものがありますが、ムラが出やすいという欠点に注意が必要です。一方、秀才型は外部にリソースを持っていることが多く、枯渇を心配する必要はありません。取材を多くする傾向があり、世の中のトレンドに敏感という特徴もあります。ただし、作品は類似したものが多くなりやすい点がデメリットです。同じリソースを用いている限り、その括りの中でしか創作活動を行えないからです。それを打破するために取材を増やすというわけです。総合的な技術力は高い人が多く、アレンジするテクニックも長けています。
上記の3種類が主なタイプであり、たいていの人はどれかに割り当てられます。ただし、明確に分かれていないケースもあるので気を付けましょう。たとえば、秀才型のなかにも情熱を持っている人はいます。一つのことに興味を持ち熱心に取材をして、応えてくれた人たちに恩返しをしたいと思う人も多いです。天才型のなかにも、ある程度は論理的に計算して考える人も見受けられます。このようなハイブリッド型もとても多く、むしろ一種類に限定されている人のほうが減ってきました。やはりアートの分野も多様化の変革期を迎えており、芸術家の方向性も複雑になっているからでしょう。この変化が後押しとなり、生み出される作品のバリエーションも増加しています。過去のどの作品にも該当しないものが登場するようになりました。これにはSNSの普及も大いに関係しており、自分の作品をすぐ他者に診てもらえます。同時に他者の作品も簡単に見られるため、自然と差別化する方向にシフトしていきます。
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